第2回「製品開発・設計で品質を高める方法」

はじめに

製造業において、品質は顧客満足度とブランド価値に直結する重要な要素です。高品質な製品は顧客からの信頼を得るだけでなく、長期的なビジネスの成長を支える原動力となります。製品の品質を向上させるためには、製品開発や設計段階からしっかりとした戦略を立てることが必要です。

 

今回は、製品開発と設計段階での品質向上に焦点を当て、具体的なアプローチや戦略を解説します。また、製品設計フローの改善や品質管理プロセスの最適化に向けたヒントを提供し、設計部門と生産部門がどのように連携して品質を確保すべきかを探ります。

製品開発・設計段階での品質の重要性

製品の品質は、単に製造過程でのチェックや検査だけで確保されるものではなく、開発・設計段階から始まります。ここでの品質がその後の製造工程全体に影響を与え、結果的に顧客に届く製品の価値を決定づけるのです。

1. 品質と設計の関係

品質は、設計そのものに深く結びついています。製品がどのように設計されているかが、製造の容易さ、コスト、耐久性、性能に影響を与えます。優れた設計は、製造上のトラブルやコストの増加を防ぐことができ、最終的な製品品質を大きく向上させます。

 

例えば、製品の設計において複雑な形状や多くの部品を使用することは、製造コストを増加させ、品質トラブルを引き起こすリスクを高める要因となります。そのため、製品設計段階でシンプルかつ高効率な設計を行うことが、品質の維持に重要です。

2. 顧客満足と品質

製品の品質は顧客満足度に大きく影響を与えます。低品質な製品は顧客からの信頼を失い、競合他社との価格競争に巻き込まれやすくなります。逆に、高品質な製品は顧客ロイヤルティを高め、ブランド価値を向上させます。特に中小企業にとって、リピーター顧客を確保し、長期的なビジネス成長を支えるためには、品質管理が重要な役割を果たします。

製品開発・設計段階で品質を高める具体的アプローチ

それでは、具体的にどのようにして製品開発や設計段階から品質を確保し、競争力を高めることができるのか、いくつかのアプローチを紹介します。

1. 設計フローの最適化

製品設計においては、設計フロー全体を見直すことが品質向上の第一歩です。設計フローが無駄なく効率的に進むことで、品質トラブルを未然に防ぐことができます。

 

具体的なポイント

・初期段階での仕様確定:製品開発の初期段階で、顧客ニーズに基づいた明確な仕様を確定することが重要です。これにより、後々の設計変更やトラブルを減らすことができます。

設計レビューの実施:設計フローの中で、定期的に設計レビューを行い、エンジニア同士でフィードバックを行うことが品質の向上に繋がります。第三者的な視点でのチェックは見落としを防ぎ、改善点を早期に発見するのに役立ちます。

2. DFMEA(設計上の故障モード影響解析)の活用

DFMEAは、製品の設計段階で潜在的な故障モードを特定し、その影響を評価するための手法です。これを活用することで、設計段階でのリスクを未然に防ぎ、品質トラブルを回避することができます。

 

DFMEAの導入手順

・製品の各部分の分析:製品の各部分がどのように機能し、どのような故障が発生し得るかを分析します。

故障モードの特定:潜在的な故障モード(例えば、部品の破損や機能不全など)をリストアップします。

影響の評価:各故障モードが製品全体に与える影響を評価し、重要度の高いものに優先的に対応します。

DFMの主な取り組み

・部品点数の削減:部品の点数を減らすことで、組立ミスや不良が発生するリスクを減少させます。

標準化された部品の使用: 標準部品を使用することで、製造コストを削減し、品質のばらつきを抑えることができます。

モジュール化設計: 製品をモジュール化することで、組立が容易になり、製造ラインでの効率が向上します。

設計部門と生産部門の連携強化による品質向上

製品の品質を確保するためには、設計部門と生産部門の緊密な連携が不可欠です。設計段階で考慮された製造容易性や品質確保の方針が、実際の生産プロセスにおいてどのように反映されるかが重要です。

1. クロスファンクショナルチームの活用

設計部門と生産部門の連携を強化するために、クロスファンクショナルチーム(CFT)を活用することが有効です。CFTは、異なる部門からのメンバーが集まり、協力して製品の開発や製造プロセスを改善するチームです。これにより、部門間の壁を取り払い、各部門の知見を融合させて品質を向上させることができます。

2. 製品開発会議の定期開催

設計部門と生産部門が定期的に製品開発会議を開催することで、設計段階での問題点や製造上の課題を早期に共有できます。これにより、設計段階での品質向上策が実際の生産に適切に反映され、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。

品質トラブルを予測し競争力を高める戦略

品質向上のためのもう一つの重要な要素は、事前に問題を予測することです。これは製造業において競争力を高めるための大きなポイントとなります。問題を未然に防ぐことができれば、トラブルによるコストの増加や納期遅延を回避でき、顧客満足度を高めることができます。

1. 予防的品質管理(PQM)

PQMは、製品が市場に出る前に潜在的な問題を予測し、事前に対策を講じる手法です。これは、品質トラブルが顕在化する前に解決策を見つけ、競争力を維持するための重要な戦略となります。

2. シミュレーションとテストの活用

設計段階での品質予測を強化するために、シミュレーションやプロトタイプテストを活用することが有効です。シミュレーション技術やプロトタイプテストを導入することで、製品が実際に製造される前に潜在的な問題を発見し、設計上の修正を行うことが可能です。これにより、開発コストや製造期間の短縮が実現できるだけでなく、品質トラブルを未然に防ぎ、顧客への提供価値を高めることができます。

 

シミュレーションの活用ポイント

 

・製品の耐久性テスト:シミュレーションを通じて製品の耐久性や信頼性をテストし、実際の使用環境での性能を予測します。

・製造プロセスの最適化・生産段階でのボトルネックや品質リスクをシミュレーションで予測し、製造フローの改善に活かします。

 

プロトタイプテストの重要性

 

試作による問題の早期発見: 実物を使ったプロトタイプテストを通じて、設計上のミスや不具合を早期に発見し、コスト

市場投入前のフィードバック収集: 試作品を顧客や関係者に評価してもらい、製品の改善に役立てることができます。これにより、より市場ニーズに即した高品質な製品が完成します。

ケーススタディ:成功事例から学ぶ品質向上のヒント

ここでは、製品開発・設計段階で品質を高めた企業の具体的な成功事例を紹介します。この事例から、どのように設計フローや品質管理プロセスを改善して競争力を向上させたのか学びましょう。

1. A社:製品設計フローの見直しで品質トラブルを減少

A社は、中小製造業として多品種少量生産を行う企業で、設計段階でのトラブルが頻発していました。特に、製品開発後に大量の設計変更が発生し、コストの増加や納期遅延が問題となっていました。

改善策

A社は、製品開発初期段階での仕様確定を強化し、設計レビューの頻度を増やすことにより、設計上のミスを早期に発見する仕組みを導入しました。また、設計と生産の連携を強化するために、設計部門と生産部門を一つのチームとして統合し、クロスファンクショナルなプロジェクトチームを編成しました。

結果

これにより、設計変更によるコスト増加が大幅に減少し、品質トラブルの発生頻度も低下しました。さらに、納期遵守率も向上し、顧客満足度の向上にも繋がりました。

2. B社:DFMの導入で製造コストと不良率を削減

B社は、部品数の多い製品を生産していましたが、製造過程での不良率が高く、コストがかさんでいました。特に、組立の難しさが品質トラブルの原因となっていました。

改善策

B社は、DFM(Design for Manufacturability)の導入に踏み切り、製品設計を見直しました。具体的には、部品点数を削減し、モジュール化した設計を採用することで、製造の容易さを確保しました。また、製造部門との協力体制を強化し、設計段階で製造現場の意見を取り入れるようにしました。

結果

DFMを導入したことで、不良率が劇的に低下し、製造コストも削減されました。また、組立効率が向上し、生産時間が短縮されたため、結果的に生産性も向上しました。

まとめ

製品開発や設計段階での品質向上は、製造業における顧客満足度やブランド価値に直接影響を与える重要な要素です。今回紹介したように、設計フローの最適化、DFMEAやDFMの活用、設計部門と生産部門の連携強化は、品質トラブルを未然に防ぎ、競争力を高めるための有効なアプローチです。

 

中小企業にとって、品質を確保するための投資や取り組みは、長期的なビジネスの成功に繋がります。製品の品質を重視し、競争力を高めるための戦略を構築することで、持続的な成長を実現できるでしょう。

 

次回は、「第3回:効果的な工場計画と生産方式の選択」にて、工場レイアウトの最適化や、自社に適した生産方式の選択方法について解説していきます。お楽しみに!

 

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