第2回「キャッシュフローの見える化 〜自社の現状を把握する〜」

はじめに

中小企業経営において、キャッシュフローの「見える化」は非常に重要です。企業活動のなかで資金がどこに使われ、どれだけの現金が手元に残っているのかを正確に把握しなければ、将来の資金不足を見過ごし、思わぬ経営危機に陥る可能性があります。しかし、キャッシュフローの流れは一見複雑に見えるため、多くの経営者がその把握に困難を感じているのも事実です。

 

本記事では、キャッシュフローの「見える化」をテーマに、具体的なツールやシステムを活用して現状を把握する方法、キャッシュフローを管理するための日常的なステップ、そしてその実践例を紹介します。この記事を読むことで、あなたの企業の現金の流れを明確にし、効果的な経営判断を行えるようになるでしょう。

キャッシュフローツールやシステムを使った現状の把握方法

キャッシュフローの「見える化」を進めるために、最初に必要なのは、適切なツールやシステムを使って現状を可視化することです。近年では、クラウドベースの財務管理ツールや会計ソフトが多く普及しており、これらを活用することで、キャッシュフローの追跡と管理が非常に簡単になります。

 

たとえば、「Freee」や「マネーフォワード」などのクラウド会計ソフトは、売掛金や買掛金の管理、日々の入出金の追跡、資金繰りの予測など、キャッシュフロー管理に欠かせない機能を備えています。これらのツールを使うと、経理担当者が手動で行っていた業務を自動化でき、リアルタイムで資金の流れを確認することが可能です。

 

キャッシュフローを見える化する際に重要なポイントは、次の2つです。

1. リアルタイムでのデータの把握

ツールやシステムを使うことで、銀行口座の動きや売掛金の回収状況など、企業の資金状況をリアルタイムで確認できます。これにより、資金繰りが悪化しそうなタイミングを早期に察知し、迅速な対応が可能になります。キャッシュフローの見える化は、過去のデータを振り返るだけでなく、未来の動きを予測するためのものであるため、リアルタイムでの監視が不可欠です。

2. 視覚的なダッシュボードの活用

クラウドツールには、キャッシュフローを視覚化するためのダッシュボード機能が備わっていることが多いです。収入、支出、現金残高などをグラフやチャートで一目で確認できるため、数字だけの表よりも直感的に状況を把握できます。特に経営者は、細かい会計の知識がなくても、グラフやチャートでキャッシュフローの変動を理解しやすくなる点で、こうした視覚的な表示が役立ちます。

自社のキャッシュフローを正確に把握するためのステップと実例

キャッシュフローの「見える化」を進めるためには、段階的なステップが必要です。ここでは、具体的な手順を踏みながら、キャッシュフローを管理するプロセスを解説していきます。

ステップ1:現状のキャッシュフローを把握する

まずは、自社の現在のキャッシュフローの状態を正確に把握することが重要です。この段階では、過去数か月分の収入と支出のデータを集め、それらがどのように変動しているかを確認します。たとえば、毎月の売上、仕入れ費用、固定費(賃貸料や人件費など)を一覧化し、それらが現金ベースでどのように動いているかを可視化します。

 

具体例として、ある製造業の中小企業を例に挙げます。この企業は、毎月の売上は安定しているものの、売掛金の回収が遅れており、資金繰りが厳しい状況でした。経営者は、キャッシュフローを見える化するために会計ソフトを導入し、売掛金の回収状況をリアルタイムで監視できるようにしました。その結果、遅れがちな取引先への督促をタイムリーに行い、キャッシュインフローを改善することができました。

ステップ2:将来のキャッシュフローを予測する

次に、将来のキャッシュフローを予測することが必要です。これは単に過去のデータを基にするだけでなく、将来の売上予測や支出計画も考慮に入れる必要があります。たとえば、新規プロジェクトの立ち上げに伴い、一定期間での資金が大量に必要になる場合、その支出がどのようにキャッシュフローに影響を与えるかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。

 

同じ製造業の企業では、年末に向けて新たな設備投資を計画していましたが、事前にキャッシュフロー予測を行うことで、投資が一時的な資金不足を引き起こすことが明らかになりました。そのため、事前に銀行からの融資を検討し、資金ショートを回避できたという実例があります。

ステップ3:定期的に見直しを行う

キャッシュフロー管理は一度行えば終わりではなく、定期的に見直しを行うことが大切です。市場の変動や取引先の状況に応じて、キャッシュフローは大きく変動します。そのため、月次や四半期ごとにキャッシュフローを再確認し、必要に応じて資金計画を修正することが求められます。

 

定期的な見直しは、ただ確認するだけでなく、実際のキャッシュフローと予測の違いを分析し、改善策を講じるための重要なステップです。たとえば、ある企業では、予測していたキャッシュフローが常に過大評価されていることが発覚し、その原因として営業部門からの売上見積もりが楽観的であることが判明しました。これを受けて、売上予測の方法を見直し、現実的な予測に基づくキャッシュフロー管理を行うようになりました。

日常的なキャッシュフローの管理方法(毎月の資金繰り表の作成方法)

キャッシュフローの見える化を継続的に実施するためには、日常的な資金繰り表の作成が不可欠です。資金繰り表は、月単位での収入と支出の見込みを一覧化し、手元にどれだけの現金が残るかを予測するものです。

 

資金繰り表を作成する際に重要なのは、収入と支出のタイミングを正確に把握することです。たとえば、売上が月末に計上される場合、そのキャッシュが手元に入るタイミングが翌月中旬になることが多くあります。一方、支払いは月初や月末に発生することが多いため、キャッシュフローが一時的に悪化する可能性があります。このようなタイミングのズレを見越して、資金繰り表を作成することで、事前に対策を立てることができます。

 

資金繰り表の作成手順は以下のとおりです。

1. 月初の現金残高を確認する

前月からの繰越現金を確認し、それがスタート地点となります。

2. 今月の収入予定を記載する

売上や受け取る予定の入金を日付別に一覧化します。売掛金の回収見込みもここに含まれます。

3. 今月の支出予定を記載する

仕入れ費用、賃貸料、人件費、光熱費、税金など、月内に発生する予定の支払いを日付ごとに記載します。この際、支払期日を厳守することが重要です。支払期限が過ぎると、信用問題や追加の費用が発生する可能性があるため、常に正確な支出予定を把握することが大切です。

4. 収入と支出の差額を計算する

月の終わりまでに手元にどれだけの現金が残るかを確認します。収入が支出を上回っていればプラスのキャッシュフロー、逆に支出が上回ればマイナスのキャッシュフローとなります。マイナスの場合は、すぐに対応策を検討する必要があります。

5. 今後数か月の予測を行う

資金繰り表は1か月単位で作成することが一般的ですが、可能であれば3か月~6か月先までの予測も行うべきです。特に大きな投資や季節的な売上変動がある企業では、中長期的な資金計画が重要になります。将来のキャッシュフローを予測することで、事前に資金調達の準備や支出の調整が可能になります。

キャッシュフロー管理の重要性を再確認

キャッシュフローの「見える化」は、単なる経理作業にとどまらず、経営の意思決定に直結する重要なプロセスです。日々の収支の流れを可視化し、将来のキャッシュフローを予測することで、経営者は資金繰りの問題に迅速に対応でき、事業の成長に向けた戦略的な判断が可能になります。

 

また、日常的な資金繰り表の作成と見直しを習慣化することで、キャッシュフローの予測精度が向上し、予期せぬ資金不足に対するリスクを低減できます。さらに、こうしたキャッシュフロー管理の実践は、取引先や金融機関との信用向上にも繋がり、必要なときに迅速に資金調達を行える体制を築くことができるのです。

まとめ

キャッシュフローの「見える化」は、現状の資金状況を正確に把握し、将来の経営リスクを予測するために不可欠な手法です。ツールやシステムを活用してリアルタイムで資金の流れを監視し、資金繰り表を通じて日常的なキャッシュフロー管理を行うことで、経営の健全化が進みます。

 

次回は、キャッシュフロー改善のための具体的な戦略について深掘りしていきます。資金の流れを適切に管理し、事業の成長をサポートするための実践的な方法を学びましょう。

 

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