第2回 「シンプルで使いやすい在庫管理ツールと手法」

在庫管理の基本を理解した皆さまにとって、次のステップは「実際に何を使い、どう管理するか」です。在庫管理に適したツールや手法を選ぶことは、経営の効率を左右する重要な決定です。多くの中小企業では、大規模なERPシステムを導入することが難しい一方、エクセルのようなシンプルなツールでも十分な効果が得られるケースがあります。

本記事では、まず手軽に始められるツールから、少し高度な在庫管理システムまで幅広く紹介します。併せて、業種や規模に応じた在庫管理手法を取り上げ、読者の皆さまが自社に最適なツールや手法を見つけられるようにサポートします。

在庫管理をすぐに始めたい、もしくは小規模な事業で手軽に管理したい場合、スプレッドシート（ExcelやGoogleスプレッドシート）は非常に有効です。スプレッドシートはコストもほとんどかからず、柔軟にカスタマイズできるため、中小規模の企業に適しています。

スプレッドシートを活用するためには、以下の要素を押さえておくと良いでしょう。

• 在庫リスト作成
  商品名、商品コード、在庫量、単価、仕入れ先、販売先などの基本情報を列に分けて整理します。
• 在庫の更新
  入出庫時に在庫量を更新します。Excelの「入力規則」機能を活用すると、簡単にデータの入力エラーを防止できます
• 在庫回転率の計算
  スプレッドシート上で簡単な数式を設定することで、在庫回転率などの指標を計算できます。例えば、売上原価と平均在庫を自動的に計算し、在庫回転率を出すことが可能です。
• テンプレートの活用
  GoogleスプレッドシートやExcelには、無料で使える在庫管理テンプレートが数多く存在します。テンプレートを活用することで、在庫管理に必要な基本機能をすぐに使用できるようになります。

ただし、スプレッドシートは在庫の種類や取引数が増えると更新作業が煩雑になり、人的エラーが発生しやすくなります。手軽な管理が可能な反面、手動での入力が多くなると、正確性を欠く可能性があるため、中規模以上のビジネスには専用システムの導入も検討するべきです。

スプレッドシートの限界を感じ始めた方や、在庫管理の精度を上げたいと考えている方には、専用の在庫管理システムをおすすめします。中小企業向けのシンプルで使いやすいツールには、無料で利用できるものから有料のものまでさまざまな選択肢があり、必要に応じた機能を導入できます。

1. Stockpile
   無料で使えるクラウドベースの在庫管理ツールで、基本的な在庫管理の機能を備えています。特に簡単に在庫数や商品情報を管理できるため、小規模な事業での利用に向いています。

2. Zoho Inventory
   Zohoは無料プランでも多くの機能が使え、在庫の追跡や注文管理、販売分析などが可能です。特にクラウドベースであるため、遠隔地でもデータを共有しやすいのが特徴です。

1. Smart Inventory
   中小企業向けの在庫管理システムで、リアルタイムの在庫追跡や在庫分析機能を提供します。さらに、ABC分析や棚卸し機能も搭載されており、在庫の効率的な管理に役立ちます。

2. TradeGecko
   こちらもクラウドベースのシステムで、在庫の追跡、発注、販売管理を一元化できます。複数の店舗や倉庫を管理する際にも便利で、スケーラブルなシステムが必要な中堅企業におすすめです。

3. QuickBooks
   会計機能と在庫管理を統合したシステムです。販売と在庫をリアルタイムで同期することで、在庫数の正確な把握が可能です。特に小売業や製造業での導入が多く、仕入れから販売までの一貫管理を実現します。

適切な在庫管理を実現するためには、ツールだけでなく、在庫をどのように分類し、管理するかといった管理手法も重要です。ここでは、代表的な在庫管理手法をいくつかご紹介します。

ABC分析は、在庫を重要度や売れ筋に応じて分類し、管理の効率化を図る手法です。

• Aランク
  最も重要な商品で、在庫数が少なくても売上や利益に大きな影響を与えるものです。これらの商品は頻繁に監視し、最適な量を確保することが求められます。
• Bランク
  重要性が中程度の商品で、Aランクほど厳格な管理は必要ありませんが、定期的な確認が必要です。
• Cランク
  管理の優先度が低く、発注頻度も少ない商品です。コスト削減を重視し、在庫量の調整も緩やかで構いません。

ABC分析を行うことで、限られたリソースを重要度の高い商品に集中させ、全体的な管理コストを削減できます。

• FIFO（先入れ先出し）
  　先に入庫した商品から順に出庫する方法です。特に消費期限のある商品や食品業界で効果的で、廃棄ロスの低減に寄与します。
• LIFO（後入れ先出し）
  　後から入庫した商品から順に出庫する方法です。コスト管理や在庫回転の向上が目的で、物理的な消耗が少ない商品や材料でよく用いられます。

ここでは、業種・業態ごとに適した在庫管理ツールと手法の実践例を紹介します。

ツール：QuickBooks
手法：ABC分析 + FIFO法

製造業では原材料が多いため、在庫をA/B/Cに分類し、Aランクの素材を常に適切な量確保します。また、先入れ先出し法を使って古い在庫から消費することで、廃棄ロスを防ぎます。

ツール：Googleスプレッドシート
手法：FIFO法

個人経営の飲食店では、スプレッドシートに食材の在庫状況を簡単に記録します。先入れ先出し法を徹底することで、鮮度が重要な食品を効率よく管理し、廃棄ロスを減らします。

ツール：TradeGecko
手法：ABC分析

小売業では商品をABCに分け、売れ筋商品（Aランク）は在庫切れを防ぐため常に補充可能な状態にします。Bランク、Cランクはコスト管理を重視し、販売サイクルに合わせた発注を心がけます。

在庫管理のツールと手法をうまく活用することで、コストを抑えながら効率的に在庫を管理できます。各ツールや手法には、それぞれ得意分野があるため、自社のニーズに合ったものを選びましょう。

次回は、「業種別の在庫管理のコツと注意点」をテーマに、各業界における在庫管理の具体的なポイントと注意点について詳しく解説します。

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