第1回「経営者が陥る「多忙病」の正体とその影響」

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はじめに:なぜ経営者はいつも忙しいのか

「気づけば今日も仕事が終わらない」「本来考えるべき戦略の時間が取れない」—そう悩む経営者は少なくありません。中小企業の経営者にとって、多忙は日常です。しかし、その忙しさは本当に不可避なものなのでしょうか?経営環境の複雑化や人手不足、そして強い責任感が、社長に「自分がやらなくては」という呪縛を生んでいます。これが、今回取り上げる「多忙病」の根幹にある心理です。私たちはこの「多忙病」を自覚しない限り、いつまでも忙しさから抜け出すことはできません。

 

実際、ある調査によると、中小企業経営者のうち約78%が「慢性的に多忙」と回答しています(中小企業庁調べ)。この数字は経営者が通常業務に忙殺され、本来の「経営」に割ける時間が不足している現実を浮き彫りにしています。

 

「多忙病」の正体:自分で仕事を抱える経営者たち

 

「多忙病」とは、経営者が業務を過剰に抱え込み、自分で全ての課題を解決しようとする状態を指します。特に中小企業の場合、事業の立ち上げ時から「全部自分でやる」文化が根付きやすく、その延長で社長がプレイングマネージャーとして業務の最前線に立ち続けるケースが多く見られます。やがて社員数が増え、売上が伸びても、社長が現場の細かい業務に関与しすぎてしまう現象が続きます。この“多忙病”は、組織にとっても経営者自身にとっても大きなリスクです。

 

【事例】製造業A社の社長が自ら現場管理を行うケース

製造業A社では、社員30名規模にもかかわらず、社長が日々の製造ラインの進捗確認から、取引先への納品立会い、果ては備品発注に至るまでを一人で管理していました。その結果、月次決算報告や資金繰りの見直しなど、重要な経営判断が後手に回り、資金ショート寸前に。最終的には外部コンサルの介入により、業務の棚卸しと委任によって改善しました。

 

多忙病が引き起こす「負の連鎖」

多忙病が深刻化すると、まず経営判断の質が低下します。日々の雑務に追われる中で、大局的な視点を持つことが難しくなり、結果として「行き当たりばったり」の経営に陥るリスクが高まります。さらに、多忙病は部下の成長も阻害します。社長がすべて決定することで、現場のリーダーが自主的に考え行動する機会を奪い、依存体質の組織が出来上がってしまうのです。こうした組織は、社長が不在になると業務が滞る脆弱な状態になります。

 

【チェックリスト】多忙病の兆候をセルフチェック

 

  • 毎週40時間以上現場業務に関わっている
  • 主要な業務の進捗確認を自分で行っている

  • 経営戦略を考える時間が月に5時間未満

  • 依頼される仕事を「断れない」「任せられない」と感じている

  • 社員からの「どうすればいいですか?」が日常的に多い

3つ以上該当する場合、多忙病に陥っている可能性が高いと考えられます。

時間を奪う「ブラックホール業務」とは

忙しい経営者ほど、日常の中で「本当はやらなくてもよい仕事」に多くの時間を割いています。たとえば、定例的に開催されるが、実は成果に直結していない会議。取引先への過剰なアフターフォローや、事細かな事務処理にまで手を出すなど、社長業にふさわしくない業務が多忙の要因となっています。これらは「ブラックホール業務」と呼ばれ、時間やエネルギーを無自覚に吸い取る存在です。

 

【具体例】ブラックホール業務の典型

 

  • 成果が不明確な定例会議

  • 取引先訪問後の雑談フォロー(1時間超)

  • 細かすぎる請求書や見積もり作成への介入

  • 納品書・契約書などの書類チェックをすべて自分で行う

こうした業務に1日あたり2~3時間が費やされている経営者も多く、可視化することでその無駄に気づくケースが少なくありません。

 

健康と経営のリスク:倒れた社長が語る実話

実際に、多忙病の結果として、過労やストレスから体調を崩す経営者は少なくありません。ある企業の経営者は、事業拡大に伴う業務過多から、突発的な体調不良で緊急入院。その間、会社の指揮系統は混乱し、取引先との関係にも悪影響を及ぼしました。復帰後に「自分が倒れても会社が動く仕組みが必要だった」と語っています。

 

 

また、厚生労働省の資料によると、過労死ライン(週80時間超の残業)に相当する働き方をしている中小企業の経営者は、全体の約2割にのぼるとも言われています。長時間労働は、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるだけでなく、メンタルヘルスにも深刻な影響を与えます。

 

まとめ:「時間がない」は改善できる課題

多忙病は「中小企業の社長だから仕方ない」と諦めるべきものではありません。実は、経営者自身が時間の使い方を見直し、組織の在り方を変えることで、多忙から脱却することは十分可能です。以下の行動プランをまず実践してみましょう。

 

 

【行動プラン】

  1. 自分の1週間の業務を30分単位で記録し「見える化」する

  2. 業務ごとに「重要度」「社長がやるべきかどうか」を判断する

  3. 明確に委任できる業務を3つ以上リストアップする

 

本シリーズでは次回以降、「何から手放すべきか」「どう委任すればよいのか」を具体的に考え、効率的な働き方への一歩を踏み出すお手伝いをします。まずは「多忙病」を自覚し、負のサイクルを断ち切る意識を持つことから始めましょう。

あなたの“考える時間”を取り戻すお手伝いをします

 

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